百談
聴いたことはないけれど、聞きたかった音楽をつくろうとしている。夜明け前、求愛か仲間への合図か、鳥の絞り出す歌声に山並みがリバーブをかける。風が木々をしならせ、葉のこすれる音が脳にヤスリをかける。濡れた地面を弾き、エンジンと響きあいながらバイクは国道をかける。かつて誰かの芯を温めたのか、想像を針に乗せ、中古レコードをかける。毎日耳を澄まして暮らし、毎日音楽をつくる。ロックは汗で濡れた制服を飛び交わせ、テクノは途方もないコンクリートを震わせた。ポップスは煌めきながらテレビの画面を飛び出して、ハウスは木の床を四つに軋ませた。身体を通り抜けていった無数の音を捕まえようと、心に染み付いた旋律の記憶を解き放とうと、温泉街で買った木のおもちゃの笛を吹いてみたり、自分のではない電子ピアノの鍵盤を叩いてみたり、バンド時代にはあまり使わなかったエレキギターを弾いてみる。コンピューターの中に鎮座するDAWは、私のアイデアを黙って全て受け止める。荒唐無稽であろうと平凡陳腐であろうと、何も言わずにただ仕事をする。だから私はどんどんと調子に乗って、楽しくなったり悲しくなったり、腕を組んでみたり、目を瞑ったり、踊ったりしながら、ずっとつくる。そうして出来上がったのが、この30分の作品(×2)である。
(発売・販売元紹介文より)
A01 百談之一:陰 B01 百談之一:陽